天王森泉公園の裏庭を散策していると、坂道を上る途中でふと目を引く光景に出会いました。濃い緑の葉を茂らせた小さな木に、たくさんの白い花が咲いていたのです。近づいてみると、その白い花は薄い黄色がかった花芯を中心に、まるで貴婦人のような優美さをたたえていました。その花は「詫助(わびすけ)」――正確には「白詫助」と呼ばれる椿の一種です。
侘助は、茶人の千利休が茶室に飾る花として特に好んだと伝えられる椿です。その名前からもわかるように、「わび」や「さび」といった日本の美意識を象徴する存在です。花自体は控えめで小ぶりながらも、その清楚な美しさが見る者の心を静め、自然への感謝や謙虚な心を呼び覚まします。特に白侘助はその中でも際立って優美で、繊細な魅力があります。
侘助は、その美しさだけでなく、多くの俳人や歌人たちの創作意欲をもかき立ててきました。たとえば、高浜虚子は「詫助や障子の内の話し声」と詠み、わび助が咲く風景に人々の静かな語らいを重ねています。この様に侘助は、自然の中でひっそりと佇むだけでなく、人々の日常や感情と深く結びついてきた花なのです。
天王森泉公園を訪れる機会があれば、ぜひ裏庭の坂道をゆっくりと歩いてみてください。白詫助の花が咲いていれば、きっとその清楚な美しさに心癒されることでしょう。そしてその花を見ながら、古の茶人たちや俳人たちが抱いた想いに思いを馳せてみてはいかがでしょうか。