天王森泉公園の野の花苑を訪れると、竹林へと続く小道の入り口にひっそりと佇むコクサギの木に出会うことができます。この小さな灌木は、緑豊かな葉を左右交互に2枚ずつつくコクサギ型葉序をしています。その姿は控えめながらも、竹林への入り口を彩るように存在感を放っています。
コクサギという名前には「小さい臭木」という意味が込められています。名前の由来となった通り、コクサギの葉をこすると独特の香りを放つことが特徴です。この香りがどこか懐かしいようで、自然と親しむひとときに豊かな趣を添えてくれます。
また、植物学者の倉田悟氏によると、神奈川県ではコクサギが「コクソッパ」とも呼ばれているそうです。その理由は、養蚕が盛んだった頃の習慣に由来します。当時、蚕を育てる際に害虫を防ぐため、コクサギの枝葉が敷物として利用されていました。蚕の糞が付いた枝葉は定期的に取り替えられ、田んぼの肥料となりました。その用途から名前の由来となったといわれています。このように、コクサギは昔から人々の暮らしに役立つ植物として親しまれてきたのです。
天王森泉公園を散策する際には、ぜひこのコクサギの木に注目してみてください。普段は見過ごされがちなその姿ですが、歴史や由来を知ることで、自然の中に息づく植物たちへの理解が深まることでしょう。そして、竹林へと続く道を歩みながら、コクサギの香りに包まれたひとときを楽しんでみてはいかがでしょうか。
自然の小さな発見が、新たな感動や興味を生むきっかけになるかもしれません。