
わさび田から流れ出る湧水の小川。そのほとりに佇む一本のアカシデが、夕暮れ時にひときわ美しく染まります。
アカシデの名は、新芽や若葉が赤みを帯びることに由来し、「シデ」は果穂が垂れ下がる様子を表すといいます。
2月の上旬、夕方5時近くになると、この木が特別な表情を見せてくれるのです。湘南台の地平線に太陽が沈む直前、その光がアカシデを真っ赤に染め上げます。背景には竹林が静かに佇み、対照的な緑のグラデーションが夕陽に照らされたアカシデの赤をいっそう際立たせます。川面にはかすかに光が揺らめき、冷たい湧水の流れとともに、時の移ろいを静かに伝えています。
赤く燃えるようなアカシデの姿は、冬の寒さの中に春の気配を感じさせるようです。この一瞬の美しさを、そっと心に刻みながら、小川のせせらぎを聞きつつ帰路につきました。